テスラがイギリスで電力事業を始めたニュースについて

テスラがイギリスで電力事業を始めたニュースについて

先日、テスラがイギリスにて電力事業を始めるための申請をしたというニュースが報じられていました。

EVsmartBlog「 イギリスで『テスラ』が電力会社としての事業開始を準備 」https://blog.evsmart.net/ev-news/tesla-applies-license-for-electricity-provider-in-the-uk/

Cleantechnica「 Tesla Applies For License To Sell Electricity In UK 」https://cleantechnica.com/2020/05/03/tesla-applies-for-license-to-sell-electricity-in-uk/

テスラといえば電気自動車のイメージが強いですが、イーロン・マスクがエネルギー事業に強く関心を持っていることもあり電気自動車以外の分野にも積極的に進出しています。その一つが今回の電力事業というわけです。

エネルギー事業、特に再エネ事業は民間の力だけでは中々採算が取れずに苦戦している企業も多いです。例えば「太陽光バブル」の崩壊などはその最たる例と言えます。

そんな中でテスラがどのような強みを生かして、どのような成果を残してきたのでしょうか。

UK以外の電力事業での実績

テスラは家庭用蓄電池「Powerwall」をリリースするなど、以前から電力関連の事業を展開してきました。13.5kWhの大容量で100万円以下と非常にリーズナブルな価格となっていて、日本でも発売が予定されているため人気が高まりそうです。

https://www.tesla.com/jp/powerwall

また、家庭用だけでなく大規模蓄電用の電池も実績があります。例えば南オーストラリア州に設置した蓄電池は現地の電気供給サービス収益の55%を占めるとともに電力料金を90%引き下げたこともあります。この大仕事は南オーストラリア州の総電力量のたった2%に過ぎない蓄電池によって行われたというのは驚きです。

バッテリーが再エネに不可欠な理由

https://electrek.co/2018/05/11/tesla-giant-battery-australia-reduced-grid-service-cost/

再生可能エネルギーの根本的な弱点は、風力にしても太陽光にしてもその電力の供給が不安定であるという点です。したがって、例えば火力や原子力のようにある程度柔軟に電力供給量をコントロールできるエネルギー源が必要になります。そうでないと大規模停電が頻繁に発生してしまいます。

ただし、火力や原子力などはオペレーションのメカニズム上、再エネに合わせて発電量を調節しようとすると発電効率が悪くなります。そのため、電力価格も上がり環境負荷も高くなるのです。再エネを導入したくても中々思うように進まないのはそのような技術的な課題があるのです。(もちろんそれ以外の政治的な要因もあるでしょうが)

そこで効果があるのが、蓄電用のバッテリーを使って再エネの発電量の調整を行うという方法です。バッテリーを発電量調整装置として一枚かませることによってより効率的な発電が可能になり、コストや環境負荷が下がるというわけです。

これは、「電力の値段が高い昼に貯めて夜間に使う」という時間軸の話だけではありません。むしろ数十分、数十秒単位での発電量の調節を行い電力使用量とのギャップの波を抑えるという点でバッテリーによる蓄電がものをいうのです。

電力事業に求められるバッテリーの特性

電力事業において求められるバッテリーの特性として、まずはその耐久性が挙げられます。当然ですがバッテリーの製造、設置にはコスト・環境負荷がかかるため、耐久性が良いバッテリーでなければ割に合いません。

また、バッテリーのセル自体だけでなくそれを制御するバッテリー・マネジメントシステム(BMS)も重要になってきます。上記のように数十分、数十秒単位での電力量の調整を大量のバッテリーセルによって行う必要があるため、よほど強力なBMSがないと効率的なマネジメントができません。

大量のバッテリーセルを制御する上では各セルの充電状態のバランスを保ちながら細かい充放電を繰り返す必要があります。もしセルバランスが崩れてしまえば劣化が急速に進むだけではなく、最悪の場合発火や爆発につながります。韓国で多発している蓄電システムの火災事故などもそれが原因の一つだと言われています。

http://dametv3.blog.jp/archives/19088324.html

逆に言えば、テスラの電力事業における強みは強力なBMSにあると言えます。おそらくテスラの蓄電設備にはEVと同様に小型の円筒型リチウムイオン電池が大量に使用されていると思われますが、小さいセルを大量に使用するのはBMSによる繊細な制御が不可欠であるため他のメーカーがまねしようと思っても中々できるものでもありません。

また、小型のセルは比較的低コストで生産が可能であるため、他の企業と比較しても圧倒的な価格競争力を持つことができます。その点こそが、テスラが電力事業においても躍進を続けている秘訣ではないでしょうか。