トヨタ×パナの電池新会社設立の本当の思惑

トヨタ×パナの電池新会社設立の本当の思惑

2020年4月1日に、トヨタ自動車とパナソニックが共同出資で新たな車載用電池の会社を立ち上げたと発表しました。

事業内容としては、「車載用高容量/高出力角形リチウムイオン電池の開発・製造・販売」「車載用全固体電池の開発・製造・販売」「上記以外の車載用次世代電池(新原理によるものを含む)の開発・製造・販売」「その他付帯・関連事業」となっています。

「プライムプラネット エナジー&ソリューションズ」公式ホームページ:

https://www.p2enesol.com/

このニュースはNewspicksでも大きく取り上げられ、特に「全固体電池の開発」の部分がフィーチャーされているように感じます。しかし、実際にはトヨタ・パナソニック二社の本当の思惑は別のところにあるのではないかというのが私の見方になります。

また、この二社は以前にも「プライムEVエナジー」という合弁会社を立ち上げていて、そこでも車載用リチウムイオン電池を生産しています。プリウスなどの電池はプライムEVエナジーのものです。

このように様々な状況やそれに伴う言説が絡まりあって複雑に見える今回の合弁会社設立について、今回の記事で解説していきたいと思います。

以前の合弁会社「プライムEVエナジー」との違い

https://www.peve.jp/company/

実はトヨタとパナソニックは以前にも「プライムEVエナジー」(https://www.peve.jp/)という合弁会社を立ち上げていて、主にハイブリッド車用リチウムイオン電池の生産・開発を行っています。

それを知っている人は、今回設立された「プライムプラネット エナジー&ソリューションズ」と何が違うのかと疑問に思うのではないでしょうか。

上記のNewspicksのインタビューでプライムプラネット エナジー&ソリューションズの好田社長は「電池開発におけるスピードの追究」「コスト競争力の強化」が新会社設立の目的であると語っています。

この言葉だけ見ると今一つよく理解できないような気もしますが、おそらく本当の目的としては「それまでのハイブリッド車用とは別物であるピュアEV用のリチウムイオン電池を、本格的に生産・開発していく」ということではないかというのが筆者の推測です。

同じリチウムイオン電池であってもハイブリッド車用とピュアEV車(プラグインハイブリッド車も含む)用とでは大きく性質・設計思想が異なるのです。前者は容量よりも出力が重視されるのに対して、後者は航続距離が稼げるだけの容量を確保することが最優先です。

そうなると用いる活物質の種類や電極、セル、電池パックの構造からして全く違うコンセプトで設計する必要があるのです。単純にハイブリッド車用の電池を少しいじれば良いという程度の話ではありません。

つまり、プライムアースEVエナジーとプライムプラネット エナジー&ソリューションズとでは似て非なるリチウムイオン電池をそれぞれ供給することになるということなのです。

そこで、これまでと全く異なるピュアEV用のリチウムイオン電池を生産・開発するために新しい会社を作ってゼロベースで進めていく方が効率的だと考えたのではないかというわけです。

本丸は全固体電池ではなく液系の車載角型リチウムイオン電池

そんな経緯があるので、おそらく今回の会社設立の本丸は車載用の角型リチウムイオン電池ではないかと考えられます。上記の記事で言及されている全固体電池というのはあくまで見世物に過ぎないのではないでしょうか。

全固体電池はEVの課題を解決はしない

以前の記事でも紹介しているように、全固体電池というのはEVの課題を解決するような性質のアイテムとは言い難い部分があります。

(廃棄やリユースなどを含めた)バッテリーのコストが高いということ以外はEVの普及という観点で大きな技術的な課題はないということはテスラのEVが世の中を席捲し始めていることからも明らかです。

よく報道されているような、「全固体にすることでエネルギー密度が上がる」「出力が出やすく急速充放電に対応しやすい」などのメリットはEV普及の決め手になるとは言い難い部分です。

むしろ固体電解質の材料費や製造プロセスの面から、Wh当たりのコストは全固体電池の方が高くなるため今のリチウムイオン電池に対してはデメリットの方が大きくなります。

トヨタとパナの思惑

そのような背景があるため、トヨタ側としてはとにかく車載用の(全固体ではない)大容量型リチウムイオン電池を確保したいというのが一番の思惑だと思われます。全固体電池は二の次でしょう。

もしかしたら、(技術的なことがあまり分かっていない)周りの株主や上層部などから「電動化の流れを乗り切るためには全固体電池のような画期的な新技術を押さえておきたい」というような声はあるのかもしれませんが。

あるいは、万が一にでも全固体電池が今のリチウムイオン電池よりも安く生産できる方法を他のメーカーが確立してしまったら間違いなくゲームオーバーなのでその可能性を潰しておきたいというのはあるかもしれません。全方位戦略を地で行くトヨタらしい方法です。

そしてパナソニックからすれば、トヨタの資本を借りてしっかり利益を出せるような電池事業を確立したいという思惑があると思われます。

テスラ向けのリチウムイオン電池は物量自体は出ているものの利益率は一桁台と低く事業性という点ではあまり上手くいっているとは言えない状況です。CATLが20%以上の利益率を出しているのとは対照的です。

パナソニック的には全固体電池なんてやっている場合ではないという部分もあるでしょうが、トヨタの意向には逆らえないのでしょう。

いずれにしろ、全固体電池というのは周囲の目を引くための表看板であって、本当の思惑はあくまで液系のピュアEV用車載用リチウムイオン電池の開発・生産でないかというのが私の見解です。